Learning Style

これから学び始めるにあたって、せっかくですのでもうちょっと突っ込んだところから始めようかと・・・。どのようにして学んでいくか、ということで学習スタイルを考えてみました。

学習スタイルという言葉を目にするのはそれほど珍しいことではないと思うのですが、この分野の研究というのは実はわずかにここ40ないし50年程度の歴史しかありません。日本ではそれほどこの分野の研究は盛り上がっていないようで、主に欧米の研究結果の紹介にとどまっているのが現状のようです。学習スタイルの研究がおかれる分野というのが難しくて、心理学の分野にもあてはまるだろうし、教育工学の分野にもあてはまりそう。多分、あまりに中途半端な立ち位置のため、日本ではあまり注目されず予算も付かなかったのかなと勝手に解釈しています。


で、この分野がどのようなものか、それを俯瞰できる資料があったので紹介しますね。200ページ弱もありますが、すごく良い資料だと思います。

Learning styles and pedagogy in post-16 learning: A systematic and critical review

このタイトルの中にある「post-16」っていうのはイギリスの教育分野で使われる用語で、あちらでは16歳のときに全国統一試験を受けて義務教育が終了(日本では15歳で終了ですので一年長いですね)するので、いわゆる義務教育以降の教育というのが post-16 と呼ばれています※1。

資料の概要は次のようになっていて、この資料では13種類のモデルが主要とみなされている様子。

This report critically reviews the literature on learning styles and examines in detail 13 of the most influential models. The report concludes that it matters fundamentally which instrument is chosen. The implications for teaching and learning in post-16 learning are serious and should be of concern to learners, teachers and trainers, managers, researchers and inspectors.


ちなみに導入部の書き出しがいいです。

How can we teach students if we do not know how they learn?

その通りですね!


以下は主要13モデルのリスト

  • Allinson and Hayes’ Cognitive Styles Index (CSI)
  • Apter’s Motivational Style Profile (MSP)
  • Dunn and Dunn model and instruments of learning styles
  • Entwistle’s Approaches and Study Skills Inventory for Students (ASSIST)
  • Gregorc’s Mind Styles Model and Style Delineator (GSD)
  • Herrmann’s Brain Dominance Instrument (HBDI)
  • Honey and Mumford’s Learning Styles Questionnaire (LSQ)
  • Jackson’s Learning Styles Profiler (LSP)
  • Kolb’s Learning Style Inventory (LSI)
  • Myers-Briggs Type Indicator (MBTI)
  • Riding’s Cognitive Styles Analysis (CSA
  • Sternberg’s Thinking Styles Inventory (TSI)
  • Vermunt’s Inventory of Learning Styles (ILS)


ここまで書いていろいろ調べているうちに日本語の資料も発見しました。
日本におけるこの分野の研究者の一人である青木久美子さんの論文 学習スタイルの概念と理論及びそれに基づく測定方法
上で紹介した論文の内容が日本語で紹介されていたりもするので是非読んでみてください。
ところでこの論文、独立行政法人メディア教育開発センターで(?)出されていたものなのですが、この組織はもうなくなっちゃったみたいです。
最適な学習スタイルは人によって異なるので、それを今の多様化しているメディアを利用することにより、個々にあった学習スタイルで学べるようにして行こうというコンテクストからこの組織で研究されていたと思うのですが、まさかなくなってしまうとは。一応内容は放送大学に引き継がれているみたいですが・・・。

ところで自分に最適な学習スタイルって知っていますか?
世の中に氾濫するライフハックの中で、本当に自分に合っている方法というのはどれほどあるのでしょうか?

例えば手帳やノートの使い方、本当に自分に合っている方法で使っていますか?
「友達が絶賛している方法で」とか「こないだ買ったライフハック本に載ってたやり方で」などいろいろあるかもしれませんが必ずしも他人に合っている方法が自分にも当てはまるとは思いません。ですが、もし自分の学習スタイル、記憶スタイル、行動スタイルなどを理解していたならそれらの方法が自分に合うか判別できるのではないでしょうか。

海外だと設問に答えていくことで自分の学習スタイルを知ることのできるようなサイトがあるので試してみると良いと思います。
自分の場合、文章を図にしていく過程で物事を学んでいくタイプのようです。
なので概念や数式という、図化しにくい分野は今まで苦手だったのかも。

この分野のさらなる研究が日本でも進みますように。
先ほどあげた主要13モデルについてはblogのなかで少しずつ紹介していくつもりです。


※1:「Education and Skills Act 2008」という方針のなかで義務教育は18歳までになることが決められました。
http://www.dcsf.gov.uk/educationandskills/
2013年に17歳、2015年に18歳までと段階的に引き上げられるみたいです。