クラウドが中小の受託開発企業へ与える痛烈な一撃

どうやら、今の世の中で「クラウド」というと例えば社内メールをGmailにしたり、社内で使っていた CRMSalesforce にしたりという、今まで自社内に構築していたものを外部サービスに置き換えることを指しているらしいということに気づいて愕然とした。

でもそんなんならとっくにやってるトコあるだろうとツッコミを入れたいところである。
それはさておき技術者向けの「クラウド」とビジネス向けの「クラウド」は似て非なるものだったのだ。

今までWebアプリばかり作ってきた自分は実はずっとクラウドを作ってきたんじゃないかとうっかり嬉しがる訳にも行かず、この流れの意味する恐ろしさを痛感しているところだ。要するに、今まで社内システムを受託で開発してもらっていた企業が SaaS 展開なんかの大企業発の割安サービスに乗り換えるということ。これなら経費節減につながると経営陣が考えるのも無理はない。

なるほどねー。

金融危機を発端とした景況の悪さを生き抜くための大企業としての戦略としてはまったくもって申し分のないものだ。こないだ内部統制で儲けたと思ったら今度はクラウドである。ただしこれ、アメリカの企業に限った話で日本の企業は総じて負け戦。そりゃーね、Salesforceの CEO は日本イケてる日本大好きって言うわ。

でもこれって中小の受託開発企業に未来はないという合意書にペタンとハンコを押しているようなもの。というのも、_すでに存在している_外部サービスへ移行するってことだからね。
では中小の受託開発企業はどうやって生計を立てていくのだろう。ということで転換策をちょっと考えてみたんだけど、さすがにハードルが高い。

幅広い顧客へリーチすべくITサービスへ転換する場合

と、上記のように初めてづくしの分野へ挑戦しなければならないためリスクが満載で、これらをカネが続く間に達成しなければならない。やることは山ほどある。しかも、開発した商品が売れるとは限らない。いや、むしろかなりの確率で失敗するだろう。なので第二弾、第三弾を絶え間なく作り、数を打ち出すことも必要だ。

サービス開発の単位はプランナー1人、デザイナー1人、開発2人が1ユニットというくらいだろうか。受託開発していた人なら開発少ないんじゃね?って思うかもしれないけど、この単位で動かせなければそもそもそれは開発効率が悪いということだ。既存の外部サービスを利用するなりして可能な限りコーディングの量や製造期間を少なくすること。全部を1から作ったら負けである。だいたいにしてこの小さな1ユニットだけでも人件費で年間3,000万円近くかかるので効率は最優先事項だ。プロジェクト数は1ユニットあたり年に6以上は欲しいところ。

ここで問題になるのがプランナーとかデザイナーって抱えてないんだけどどうすればいい?ってトコである。プランナーはマーケティングブランディング、プロモーション、営業、管理をこなすスーパーマンである必要があるので、短期的に養成できるはずもない。最初は外部から調達して内部で転換可能な人材を見習いにつけて養成していくという流れになるのだろうけど、もちろんそのプランナー予備軍(多分その企業の中でもトップクラスの頭脳だ)は元は開発者だからキャリアプランに沿わなければ転換に応じない可能性もある。ここもリスクだ。デザイナーに関しては最初は外注のほうが良い。なぜなら才能あふれるデザイナーを獲得するのは実は一番難しく、そもそも才能のあるデザイナー達はすでに独立しているからだ。

と、こういうことになるんだけどこれらは夢物語ではなく、実際にやらなければいけないこと。
もし出来ない場合、今までと同じビジネスを続ける場合は一層苛烈でゴールの見えない消耗戦が待ち受けている。