日本のコンピューターサイエンスのカリキュラム

日本の大学のコンピューターサイエンスについてのカリキュラムを探そうとすると結構苦労しますね。というのも「コンピューターサイエンス学部」というのはまだ少ないうえ、ほとんどが工学部か理学部に所属する形になっており、さらに大学によってその呼び名が変わるため検索するのに骨が折れます。

ですがカリキュラムの指針を情報処理学会が出しているのを見つけました。

大学の理工系学部情報系学科のためのコンピュータサイエンス教育カリキュラム J97,1.1 版
http://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/J97-v1.1.pdf

ただこのカリキュラムが出てから10年が経過し、その間の技術革新は無視できないものだったため内容を新しいものに差し替えるべく情報系専門教育カリキュラム標準 J07というカリキュラムが新規に策定されています。

J07の中では

  • CS:コンピューター科学
  • IS:情報システム
  • SE:ソフトウェアエンジニアリング
  • CE:コンピュータエンジニアリング
  • IT:インフォメーションテクノロ

という5分野でそれぞれ習得すべき知識体系が整理されています。5分野の中から一つ選んでそのカリキュラムを4年かけて学んでいくイメージですね。

J07カリキュラム全体は
http://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/J07/J0720090407.html
からPDFでダウンロード可能ですので興味がある方はご一読ください。

で、その中の
3−1 コンピューティングカリキュラム 2005 概要報告
という資料の中に上記5分野を修了するとどういう力がつくのか簡単にまとめられていたので紹介します。

  • コンピュータ科学者は,論理的な仕事からソフトウェア開発まで幅広いレンジでの仕事を行うことができる。
  • 情報システムの専門家は,情報処理の要求とビジネスプロセスを分析することができ,組織の目標に沿ったシステムの仕様化や設計を行うことができる。
  • ソフトウェアエンジニアは,大規模ソフトウェアシステムのライフサイクルの,どの局面における作業であっても,適切に遂行し管理することができる。
  • コンピュータエンジニアは,ハードウェアとソフトウェアを統合したシステムの設計と実装を行うことができる
  • インフォメーションテクノロジのプロフェッショナルは,組織のコンピュータインフラの計画,導入,構成,および保守を効果的に行うことができる。

うーん、この文章だとぜんっぜん惹かれない(笑)ので自分なりに噛み砕いてみました。

  • Google入社に一番近い→CS
  • 大手SI入社に一番近い→IS、SE
  • Apple入社に一番近い→CE
  • 大手企業に社内SEとして入社に一番近い→IT、IS

みたいな感じかなー。思いっきりバイアスかかってますけど私見ですからね、あくまで。Googleにもインフラの専門家必要だしAppleにも多岐にわたる職種があるのはもちろんわかるのですが・・・でもイノベーションの発生しそうな分野を上の5分野から選べっていわれたらCSかCEなんだろうなって。 企業側のニーズを考えるともちろん残り3分野も必要なのでしょうけれども学生側の視点で考えてみればその3分野に果たして夢を持てるかというと疑問符が付いてしまうと思うんですよね。
ということで5分野のカリキュラムを用意しても特定の分野にしか学生が集まらなさそうな予感。


さて次回からはアメリカの大学のカリキュラムを実際にみていきます。